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バラの花束
恭介と離婚した私は、泉の花屋で働いていた。
結局、被害届は出さなかった。
あの日以来、恭介とは会っていない。
弁護士によると、離婚後、会社を辞め、家を売り、田舎に帰ったと聞いた。
私は二度と関わることのない人だが、彼は彼の人生を生きてくれることを願っている。
「どうかした?体調悪い?」
泉が心配そうに私の声を覗き込んだ。
「ううん、大丈夫。それより配達の時間じゃない?」
「そうだった。なるべくすぐ帰ってくるからね。」
「うんうん、ちゃんと店番してるから安心して?」
泉はかなりの心配症だ。
「何かあったら、なくてもすぐに連絡してね。」
「分かってるってば。行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
やっと、車に乗り込んだ泉は配達へと向かった。
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