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青い惑星の、広い海のただ中。鬱蒼とした緑の隙間を、白い影がすばしっこく駈け抜けた。人間の子供くらいの大きさで、キリンのようにひょろりとしている。ただし、脚は三本しか生えていなかった。まるでカメラの三脚のようだ。
謎の生き物は茂みから飛び出すと、赤茶けた割目に逃げ込んでしまった。それを追って、二人の男がやってきた。
「まだ追いかけるつもりか」
息を弾ませながら、植物学者が尋ねる。動物学者は麻酔銃を握り、意を決したように答えた。
「今日が調査最終日です。一種でも多くの生物を発見して、この島の生態系を理解したいんですよ」
割目の周りには、コウモリに似た灰色の生き物が飛び交っていた。慎重に降りてゆきながら、動物学者が言った。
「あのサンキャクは、普段はこの地割れの中に棲んでいるのでしょう。白い皮膚は、地球の洞穴生物にもみられる特徴です」
植物学者はいつの間にか足を止めて、むつかしい顔をしている。動物学者は不思議に思って声をかけた。
「どうかされましたか」
彼はハッとして、かぶりを振った。
「いや、少し考え事を」
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