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3.
ピンポン、ピン、ピンポーン
手がふるえて、チャイムがうまく押せない。けれど、なんとか麻耶子のアパートにたどり着けた。うすい玄関ドアの向こうに、人の気配がある。
「麻耶子……」
「ママ?!」
声がしたのは横からだ。目を向けると、外廊下に面した部屋の窓に、娘の顔が見えた。
「麻耶子ぉ!」
よかった、無事みたいだ。うれしくてかけ寄ったら、勢いあまって窓に頭をぶつけてしまった。
ガシャーーン!
「きゃあぁ!」
「麻耶子、下がれ!」
ガラスのわれる音、麻耶子の悲鳴、それに、男の声がひびく。
体のはばだけドアを開けて、廊下に出てきたのは傭平くんだ。その手には、金属バットがにぎられていた。
「お義母さん……」
彼は顔をゆがめて、じっと私を見つめている。はだしで歩いてぼろぼろの足を、キズだらけの体を、ガラス片のささった頭を。
「ママッ!」
ドアのすきまに、麻耶子の泣き顔が見えた。傭平くんが私をにらんだまま、短くどなる。
「麻耶子は出てくるな!」
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