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彼のうしろにかくれて、よく見えない。でも麻耶子のおなかはもう、ふっくらしているはずだ。こんなことになるなら、こんなことになる前に、一回だけでもなでさせてもらえばよかった。
きっと、麻耶子に似たかわいい赤ちゃんだろう。やわらかくて、ミルクのあまいにおいがして。
思いうかべたら、口の中がつばでいっぱいになった。
ボタボタボタ
あふれたよだれが、足もとにおちる。
「麻や子……」
そこにいる。私の麻や子がそこに、いる。おなかに、やわらかな赤ちゃんも──
足をふみだす。
手をのばす。
ヨウ平くんの目が、ギュッとほそくなって。ぎん色に光るバットが、ゆっくりもちあげられた。
「麻耶子! 目ぇつぶってろ!」
「いやあぁぁ!!」
ゴシャ!!
カボチャがつぶれたような、おとがした。
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