3.

2/2
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 彼のうしろにかくれて、よく見えない。でも麻耶子のおなかはもう、ふっくらしているはずだ。こんなことになるなら、こんなことになる前に、一回だけでもなでさせてもらえばよかった。  きっと、麻耶子に似たかわいい赤ちゃんだろう。やわらかくて、ミルクのあまいにおいがして。  思いうかべたら、口の中がつばでいっぱいになった。  ボタボタボタ  あふれたよだれが、足もとにおちる。 「麻や子……」  そこにいる。私の麻や子がそこに、いる。おなかに、やわらかな赤ちゃんも──  足をふみだす。  手をのばす。  ヨウ平くんの目が、ギュッとほそくなって。ぎん色に光るバットが、ゆっくりもちあげられた。 「麻耶子! 目ぇつぶってろ!」 「いやあぁぁ!!」  ゴシャ!!  カボチャがつぶれたような、おとがした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!