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別れはいつも突然だ。
ルミは千春を突き飛ばすと、家の外に飛び出した。もう、身体中が痒くてたまらない。目も霞んできた。
「人間でいられるうちに、サマルに会いたい……ひと目だけでも……サマル、大好きだよ!」
ルミが最後に見たのは、インド料理屋の黄色い窓越しに、大好きなサマル店長が踊る凛々しい姿。
目に焼き付けようと涙を拭う。
ふと、目が合った気がした。
「サマル……グギガ……大好ギだったゲー」
慌ててサマルが飛び出してくる。
「ルミちゃん?一体コレは?」
ゾンビ化を気力と根性と気合だけでそらし、ルミは辛うじて残る人間の姿で微笑んだ。
「こんな姿で失礼しますゲー。今から貴方を……一生……追いかけるグギガ!」
諦めようとしても、急には諦められない。たとえゾンビになったとしても、この世から、人を好きになる気持ちは絶滅しない。『カターオモイ』が蔓延するこの世界で、ゾンビ化を止めるすべはないのだ。
さぁ、地の果てまでも追いかけろ!
もう、失恋する心配もないのだから。
完
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