こんな姿で失礼します

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「ゾンビ化した人間は、今のところ救う手立てはありません……あ〜、ですが、そのぅ~、ゾンビが襲うのは片想いの相手であって〜、手当たり次第襲う訳ではないからにして〜……」  はっきりしない沼田厚生労働大臣に、囲んでいる記者達からの怒号がいくつも飛ぶ。 「たった一人でも襲われるのでしょう?喰われるのでしょう?」 「しかも片想いとはいえ、相手も好きだった可能性がある微妙な間柄で!そこのところはどう説明されるのですか!」  逃げ腰の沼田厚生労働大臣は、取り巻きに目配せをする。お時間ですと、沼田を記者から引き剥がしてもらう為に。 「と、とにかくもう少しデータが欲しい訳で〜」 「同じセリフを半年も聞いているんだ!」 「国民を見殺しにする気かー!」 「ゾンビの数はまだ増え続けているんだぞ?責任を取れよ!」  官邸入口でフラフラしていた数体のゾンビもカメラに映り込み、テレビの前の国民は絶望のため息を吐いていた。  スタジオのアナウンサーにカメラが切り替わり、次の特集『片想いを捨てよう』に移ろうとした時、スタジオが慌ただしくなった。  そのまま緊急報道番組に切り替わる非常事態だ。 「緊急報道番組です。先程インタビューされていた厚生労働大臣の沼田義雄議員69歳が、たった今、ゾンビ化した模様。繰り返します、沼田議員妻帯者のくせにゾンビ化です!」
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