『仲がいいだけ』。

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『仲がいいだけ』。 そう。彼と僕は、ただ単に『仲がいいだけ』。 全然、それ以上もそれ以下もないから。 〜〜 「悠斗くん、宿題、僕わかんないところあったから教えてくれない?」 カバンを肩にかけたツンツン頭の田中悠斗くんに僕は話しかけた。 「わかんないとこ?そんなに難しかったかー?」 「僕にとっては難しいの。」 「あ、そういやお前この間のテストで14点とってただろ。」 「うぇぇー!!なんでバレてるのっ?!」 「わかるよ。」 そんな会話をしながら朝の爽やかな道を歩いて学校へ通う。 同じアパート、同じ階に住む悠斗くんとは毎日一緒。 僕、先島樹は毎朝幸せです。 〜学校〜 ガヤガヤと騒がしい朝の教室。 僕は大人しく席で本を読んでいた。 すると、悠斗くんは僕の隣に来てフッと笑った。 「ほっちに構ってあげる。」 そう言うと、僕の座っている椅子に一緒に座って、肩に頭を乗せた。 そのままジーッと過ごし、沈黙が続く。 こういうのは「構ってアピール」って言うんだよね。 僕、悠斗くんの構ってアピールが可愛くて好きなんだ。 しばらく何も喋らずにいると、悠斗くんが、小説を持つ僕の手に手を重ねてきた。 「どうしたの。」 「……暇なんだけど。」 「そっか。」 僕がふふっと笑って小説を閉じた。 そのとき、「あのー……」と声をかけられた。 前を見ると、そこそこ仲のいい男の子の友達が立っていた。 「どうしたの?」 「えっとさ、いつも聞いてんだけど、二人ってどういう関係?すんげえ距離近くない?」 頭をかきながら苦笑いを浮かべる彼。 僕はちらっと悠斗くんを見てから言った。 「…ただ、『仲がいいだけ』だよ。ほら、家も近いし、毎日一緒にいるしね。」 「そーそー。」 悠斗くんも縦に首を振り、彼の方を見た。 「…どういう関係だと思ってる?」 「えっ、えっと…。」 その子は汗を浮かべた。 「……付き合ってる、とか?」 引きつった笑みを浮かべ、僕の顔を見比べた。 僕たちは一瞬ビクッとしたものの、すぐに心をなだめて冷静に答えた。 「『仲がいいだけ』。」 〜昼休み〜 「うわーー。さっきのテスト、本格的に赤点取れるー……。」 風の気持ちいい屋上に置いてある机に僕がうなだれていると、悠斗くんが僕の頭になにかを当てた。 「ん。」 いちごミルク。 自販機で買ってきたのかな。 「ありがとう…。…さっきのテスト、どうだった?」 「ああ。まぁ、いいんじゃない?」 「…だよね〜。悠斗くんってホンっと優踏生……、」 「帰ったら教えてやるよ。国語を重点的に。」 「うえー。だったら帰りたくないよ!国語…むり…。」 いちごミルクをストローで吸いながら涙目になると、悠斗くんは僕の手から紙パックを取り上げた。 そして、自分の口に含んでため息をつく。 「ったく…。じゃ、先生と居残りするか?」 「それも嫌!だったら悠斗くんと勉強するよ。」 「だろ?だったらつべこべ言わずに帰ったら国語!!」 「はぁ〜い。」 そのとき、 「ね、ねぇ。」 屋上に入ってきた女の子たちは、僕たちをみて苦笑い。 「どうしたの?」 僕が聞くと、その子達は口を揃えてこう言った。 「二人って、やっぱ付き合ってるんだよね?」 僕は悠斗くんと目を合わせると、またこう言った。 「「『仲がいいだけ』。」」   〜完結〜
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