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「そんなの反則よ!」
私がそう言うと、保安局の人間を盾にしていた男が「うあああ!」と悲痛の叫びを上げながら横たわった。私がマズいと思ったときに必ずリストキー副所長の援護が入るの凄すぎる。
「くそ! どこを見ればいいんだ!」
「とりあえず奥へ下がれ!」
と、敵は大混乱。私がいた通路に敵は一人もいなくなった。敵がいるのは右側と左側の通路からの攻撃を防げることができる奥の中央の通路だった。屈んで手すりを盾にすれば私とリストキー副所長の銃弾は通らない。
「いい加減投降しろよ。俺が来たからにはアンタ等に勝ち目はないって」
リストキー副所長はそう言ってジリジリと敵に詰め寄っていた。
「う――うるさい! 投降なんてしてみろ! 俺達はあいつに殺される!」
「あいつ?」
リストキー副所長と敵の会話が妙に気になる。他に誰かいるのだろうか? そう思っていた時だ。奥側の通路から突如として現れた身の毛がよだつような禍々しい武氣を感じ取ることができた。思わず背筋が凍り、セレネを持っている私の手は震えていた。
「アイツとは人聞き悪いじゃねえか」
その声と共に敵勢力の一人が鮮血を散らしながら倒れこんだ。その異常な光景に敵は完全に恐怖で体が硬直していた。
「テメエ等みたいな雑魚に協力要請した俺が馬鹿だったぜ。そう思うだろ?」
そう言って現れたのは右目に眼帯をした黒いターバンを巻いた男だった。赤い着物の上には黒い外套を羽織っており、鮫のように鋭い目と背中に一本の剣と左右に四本ずつ脇差を備えているのが特徴的だ。
「お前――ただ者じゃないな……」
さっきまで余裕の表情を浮かべていたリストキー副所長は神妙な目つきへと変化していた。
「まさかアンタみたいな強敵と会えるとは思ってもみなかった。愉しくなりそうだ」
その男は舌なめずりをしてリストキー副所長を睨めつけた。
「お前――名前は?」
「俺か? 俺の名前はそうだな――マンバとでも言っておくか。貴様はさっき叫んでいるあそこの女が言っていたな。ガレス・リストキー。最近話題の民間軍事事務所の副所長だったな。そうじゃなくても数年前に聞いたことがあるが――それは思い出した時でいい。どうだ? 俺と遊ぼうじゃねえか」
「断れそうにないな」
リストキー副所長がそう言うと「ご名答!」と言って、マンバは背中の剣を抜いて、リストキー副所長に振りかざした。
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