罪の在り処

表紙

「罪を犯していない『罪人(つみびと)』、
それが加害者家族だと思うんです」

彼女の口から吐き出された言葉が、
僕の胸に重くのしかかる。
僕は遣る瀬無さに唇を引き結びながら、
暗い影を宿す瞳をじっと見つめていた。

◇◇◇

＜登場人物紹介＞

・卜部　吾都（うらべ　あさと）
加害者家族を支援する団体　STAND　BY　
U（通称：SBU）の職員であり臨床心理士。
親友を救えなかった心の傷が癒えず、強迫
性障害を抱えている。

・藤治　佐奈（ふじはる　さな）
兄が起こした殺人事件の社会的制裁から逃れ
るため、母方の旧姓を名乗っている。祖父が
営む古書＆カフェ「みちくさ」で働いている。

・木林　誠道（きばやし　まさみち）
目黒北警察署　刑事課　強行犯捜査係
刑事課長（警部）。キャリアでありながら
出世コースから脱落。吾都と同じく親友を
救えなかったことを悔やんでいる。

・比賀　武弘（ひが　たけひろ）
吾都と誠道の親友。父親が起こした殺人事件
を苦に十年前に自殺。

・早川　永輝（はやかわ　えいき）
佐奈の実兄。当時付き合っていた当麻心春を
殺害。服役中に獄中結婚し、早川永輝となる。

・早川　すみれ（はやかわ　すみれ）
獄中結婚した永輝の妻であり、元新聞記者。

・当麻　心春（とうま　こはる）
永輝と付き合っていたが二十歳の時、永輝に
殺害される。

・当麻　卓（とうま　すぐる）
心春の実兄。心春・永輝とは同じ高校の先輩
後輩という間柄。

・当麻　朝子（とうま　あさこ）
心春と卓の母親でシングルマザー。

・貴船　宗次郎（きふね　そうじろう）
支援団体　SBUの理事長であり吾都の良き
理解者。

・貴船　菜乃子（きふね　なのこ）
貴船宗次郎の娘であり支援団体　SBUの
副理事。

・津山　克利（つやま　かつとし）
目黒北警察の刑事係長。木林とコンビを組ん
でいるが、現場主義を貫いているため五十代
半ばを過ぎても未だ警部補。

・六道　岬（りくどう　みさき）
夜カフェ「MISAKI」のマスター。中世的な
美人だが、オネエ。木林に恩を感じており、
彼を慕っている。

・浅利　伴人（あさり　ともひと）
株式会社To meetの社員。「本と街の未来を
変えるプロジェクト統括リーダー」として、
商店街に出入りしている。

・みちくさ爺さん
古書＆カフェ「みちくさ」の店長で佐奈と
永輝の母方の祖父。