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わたしは学んだ
もう他人なんて信用ならない。
私は私だけを信じる。
娘を取り戻すために。
死に戻りである程度の情報はあるし何より私には娘との視界共有がある。テレポートの魔石で目の前に現れたら罠で死ぬからまずは距離をとって近づいた。それから気配を消し、速度を上げる魔法を足にかけて近づいた。そこまではよかった。
あと数メートルで娘に届く、というところで突然犯人は娘の入った白い袋を担いで立ち上がった。そして私に背を向け走り出した。
どうしてバレたのか
小枝の音か
息遣いか
娘を取り戻せる期待のあまり早くなった鼓動の音か
ひとまずバレたのなら遠慮はいらない。
スピード強化の魔法や石、道具とありとあらゆるものを使って追いかけるのみ。
距離はすぐに縮まった。
だが、相手もただ逃げるだけではない。
手始めに槍が飛んできた。
1回目の騎士が死んだ槍だ。
あらかじめ持ってきていた盾で防いだ。
次に衛兵が目くらましにあった砂煙が目の前に広がった。
風の魔法で吹き飛ばしすぐに視界を広げた。口や鼻に入り咳が止まらなかったが、止まって娘を逃すくらいなら私の喉が死んだってかまわない。
怯まない私に焦ったのか火球や氷の刃が飛んできた。
ただねらいは正確でちゃんとよけなければ死ぬような威力と精度を持った魔法だった。犯人は魔法も武器も扱う優れた人物なのだろう。
近所のつわもの達がやられた魔法だが、私は魔封じの腕輪を持っている。
私の前で塵となる魔法など障害にもならない……と思ったが、魔法がぶつかりあい霧ができた。前が見えない。魔力も底をつきた。風魔法は使えない。だけど娘に施した印がある。私はそれを頼りに追いかけ続けた。
だが突然頭がぐらついた。
ギルドの人たちを錯乱させた超音波だ。
これは一度娘を介して味わった。
だから私には耐性がついている。
ただ、痛い。苦しい。
めまいが、する。
けど、娘を失う痛みと比べればどうってことない
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