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1回目は、一瞬だった。
我が子を入れているだろう白い袋を担いで走る黒い影は相当な手だれのようで、テレポートの魔石を使っても捕まえられなかった。折角、印により居場所を教えたのに、貴重な魔石を持っていると言って依頼を快く受けてくれた騎士は、娘の目の前に現れた瞬間胸部を槍で一突きにされ意識を失った。
娘になんてものを見せるんだと憤った私は娘の心臓に施したナイフ魔法で騎士にとどめを刺し、さらに自分の胸を一突きにしてそれをなかったことにした。娘と視界を共有できる術を瞼に施していて本当に良かった。危うく、大事な娘にトラウマを植え付けてしまうとこだった。
2回目はもっとひどかった。
衛兵とはなんとガサツか。安いから5人ほど雇った結果、犯人を捕まえることはできなかったが娘を取り戻すことに成功した。だが、娘と目を合わせた瞬間、あいつらは下品な笑みを浮かべ手を伸ばした。その後起こることを考えたくなくて私は娘の手の甲に仕込んであった爆炎魔法を発動してから自分の心臓も燃やした。
3回目は近所の屈強な者に頼んだ。
娘を取り返してくれれば相応の報酬を渡すと言ったら皆こぞって指定の場所に行った。そうして漸く若者が1人娘を奪還したが、娘を一目見た途端半狂乱の表情で奴隷市へと駆け込んだ。受付の髭オヤジに娘を自慢げに見せる男の顔を見た瞬間反吐が出そうでたまらなく、娘の舌の裏に印づけた魔法を発動してその場を毒の霧で満たし、娘が死ぬ前に私は猛毒を飲み干し喉を焼きながら死んだ。あれは苦しかったからもう二度としない。
4回目はマシだった。
が、一番質が悪かった。
全財産をはたいてギルドに依頼し、娘を奪還してもらえたまではよかった。犯人は相当手練れだったらしく捕まえられなかったという報告も別にどうでもよかった。
問題は、そのまま私に娘が返ってこなかったことだ。
これは基準を超えてるなどと宣う気持ちはわかるが美しすぎるのは仕方がない。王家に似ていると言われても美しすぎるからそう見えても仕方ない。だが、私が本当に親か怪しいというのは許せない。私の桃色の髪を見せ、娘と全く一緒だと主張しても瞳の色が違いすぎると言う。
あまりにも腹が立った私は、娘の黄金の瞳を真っ赤な瞳に変えて視界に入るギルドの人間ども全て茨で血に染めてやった。
娘が泣き叫ぶ声を聞きながら、私は大丈夫よって心の中であやしながら私は娘の痛みを少しでもわかってあげられるように自分の赤い瞳に穴を空けてから自分の胸に穴をあけ心臓を握りつぶした。
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