01 現実はゲームのようにうまくいかないらしい

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 どうやら私は、昨今のネット小説ド定番『乙女ゲーム転生』を果たしたらしい。  改めて周囲の景色を見渡してみれば、既視感がすごい。既存作品をモチーフにしたテーマパークに迷い込んだら、こんな気持ちになるのかもしれない。  キャラデザを人気少女漫画家が手掛け、シナリオ原案は女性向けの小説を多く執筆している小説家が担当したことで、発売前から話題になったゲームだ。のちにキャラデザご本人の手によってコミカライズ化し、原案小説家によるノベライズも発売された。  内容はシンプルで、他のゲームと明確な差はないんだけど、メディアミックス作品のクオリティが半端なかった作品である。  ざっくり説明すれば、ヒロインは庶民で、魔法の才能を買われて王立学院へ入学。貴族の子どもたちが集まる学び舎で異彩を放ち、常識や価値観のギャップで男たちを篭絡していく超ベッタベタなやつ。  いわゆる『悪役令嬢』も登場する。これは原案の人がネット小説出身ということにも起因するだろう。  古き良き乙女ゲームというよりは、創作物に氾濫する「なんちゃって乙女ゲーム」を本当にゲームにしたかんじ。ヒロインによろめく王子の婚約者であるブルイエ侯爵令嬢、エルヴィーラが私だ。  悪役令嬢に転生するとは、これまたベタな展開だわーと思うところ。  ヒロインをイビりまくって、最終的に、衆人環視のもとで婚約破棄を告げられるところまでお約束で、つまり転生した私は巻き返しをはかるべきところなんだけど、ここからがすこし定番とずれている。
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