あの夏に呪われている

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今まで、莉乃は剣道で負けたことなどなかった。個人戦は常に優勝、団体戦も最低でも準優勝にまでいけるようにレギュラー編成もキャプテンと話し合い、勝てるチームを作っていた。だが、今日でその努力が全て奪われてような気持ちになってしまう。 「チッ!」 汗を乱暴に拭い、もう一度莉乃は舌打ちをする。試合が終わった後の先輩や後輩たちの会話を思い出したのだ。 悔しさと怒りでおかしくなってしまいそうな莉乃に、先輩や後輩は気付くことはなかった。初戦で負けたというのに後輩たちは笑っており、先輩もニコニコと笑みを浮かべている。 「まあ、初めての試合だししょうがないよね。練習を頑張って、次は一試合でも勝てるようにしよう」 「は〜い!先輩、せっかくですしアイスでも食べて帰りましょうよ。最近新しいお店ができたらしいですよ」 笑いながら剣道ではなくアイスクリームの話をしている全員に対し、莉乃は殺意すら湧いてしまい、後輩が話しかけてくる前に足早に試合会場を飛び出し、今に至る。
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