あの夏に呪われている

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『ーーー皆さん、おはようございます。七時のニュースをお伝えします。今日も全国各地で晴れの予報となっていて、熱中症に注意してください。最高気温は四十度の猛暑となるでしょう』 天気予報士が今日の天気を国民に教えていく。アニメのグッズが並べられた部屋のテレビ画面に映し出されたのは、晴れを意味する太陽のマークだ。雨が降っている地域はない。 七月一日、今日も外では青空が広がっており、まだ朝の七時だというのに家の外からは蝉の大きな鳴き声が響いている。外を歩いている老夫婦が「蝉時雨だね」と汗を拭いながら言い、笑いながら歩いていく。 家の中では、一人の中学生と思しき少女がテレビ画面を見て絶望の表情を浮かべていた。晴れマークしかない画面を見て、少女は唇と肩を震わせる。そしてその場に崩れ落ちた。彼女の体には、無数の痣や傷があった。 「何で!?何でよ!!雨降ってよ!!雨降らなきゃ、私、私……」 少女はセミロングの茶色の髪を掻きむしり、その目から大粒の涙を流しながら叫ぶ。彼女の背後にある窓には、雨が降ることを願う逆さてるてる坊主が吊るされていた。ニッコリと笑っている顔が描かれたてるてる坊主は、夏の強い日差しに照らされている。
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