あの夏に呪われている

2/15
前へ
/15ページ
次へ
「雨降ってよ!雨降って!一時間……いや、三十分でもいいの!部活の時くらい降ってよ……」 テレビ画面に向かい、少女は体を震わせながら土下座をする。何度も少女は懇願するものの、空には雲一つなく、天気予報はいつの間にやら終わり、アナウンサーが最新のニュースを話していた。 「どうしよう……。部活まであと二時間くらいしかない!何とかしなきゃ!」 髪を乱暴に少女は掴み、怯えながら手元にあるスマホの電源を入れる。そして震える手で何かを調べていた少女は、ゆっくりと口角を上げる。 「……そっか!これをやれば私はもう苦しまずに済む!」 少女は先ほどまで何かに怯え、泣いて懇願していたのが嘘のように顔に笑みを浮かべていた。そして、軽やかな足取りで部屋を出て行く。 少女が部屋を出て行ってから数時間後、晴れだと天気予報で言われていた青空は暗く重い灰色の雲に覆われる。そして、空から大粒の雨が街に降り注いだ。 ーーー六年後。七月一日。 梅雨が今年は一週間ほどで終わってしまい、それからは毎日猛暑日が続いている。人々を焦がしてしまうかのように太陽が照り付け、多くの人は日陰へと逃げて行く。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加