あの夏に呪われている

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パッチリとした二重、傷一つない真っ白な肌、アイドル活動をやっていますと言っても不思議ではない見た目の店員から莉乃は目が離せない。 (最近どこかで会った?いや、違う。もっと昔だ。確かこの顔はーーー) 「お一人様ですか?」 莉乃が心の中で答えを導き出そうとすると、店員がニコリと笑いながら訊ねる。莉乃は「ああ」と返事をすると、「こちらへどうぞ」と窓際の席に案内された。 「お冷やを持って来ますので、少々お待ちください」 店員はそう言うと頭を下げ、席を離れていく。莉乃はその後ろ姿を見送った後、メニュー表に目を向けた。手作りらしいメニュー表には、可愛らしいイラストと共にこのカフェで売られているスイーツやドリンクの名前が書かれている。 (パフェにアニマルカップケーキ。熊のアイスケーキにフルーツタルト……。the女子って感じのメニューばっかかよ) インスタ映えしそうなスイーツばかりである。その時、莉乃はふと店内に自分しかいないことに気付いた。こんなにも可愛らしいカフェならば、女性たちが訪れてもおかしくないはずだ。それなのに今、ここには莉乃しかいない。
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