あの夏に呪われている

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シン、とカフェの中は静まり返っている。可愛らしい空間だというのに、可愛いスイーツにはしゃぐ女性の声も、写真を撮る音も何もしない。それがどこが不気味で、莉乃はここを出ようかと考えた。しかし、疲れのせいか椅子に体が縛り付けられたかのように動けない。 ふと莉乃が窓の上を見ると、てるてる坊主がぶら下がっていることに気付く。しかし、そのてるてる坊主は何故か逆さまに吊るされていた。 「何で逆さまなんだ?」 「それは逆さてるてる坊主と言って、雨が降ってほしい時に吊るすんですよ」 莉乃の呟きに店員がすぐに答える。いつの間にか、莉乃のそばにはお冷やを持った店員が立っていた。 「へぇ〜、逆さてるてる坊主。初めて聞いた」 「そうですか。過去にあれだけ「雨降るようにしろよ」と言っていたので、ご存じだと思ってました」 店員は冷ややかな目を向ける。その目を見た刹那、莉乃は寒気を覚えた。それと同時に恐怖を感じる。今までどんな相手と試合をした時にも感じなかったことだ。 「は?そ、そんなこと、いっ、言ってない!そ、それより、アイスコーヒー、ミ、ミルクも、砂糖もなしの、一つ!」
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