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樹 ー樹胎ー
父さん父さん
痛い
痛い
辛い辛い
痛い
まだ迎えには来ないのかな
まだこうして
立っていなくてはいけないのかな
もう力が出ません
痛くて
辛くて
なみだが
おちた
ボタボタ
おかあさんどこですか
ここに腰掛けて
色んなとこ眺めたけれど
おかあさんの居るところが見えません
おかあさん、ぼくのこと
忘れたのかな
樹は焼けただれて曲がってしまった背中を
起こすように
遠くを眺めた
なみだがぽたポタポタ
櫟のなかで樹はうずくまり
痛みで丸めた背中をかばうように
静かに
横たわった
暖かい光がその時、東から指し
樹の木を包んでいた
家々は
燃え尽きて、
黒く残ったものが燻ぶっていた
空は
鈍色に、思えたが
やがて地平を蹴って
陽がが昇ってきたのだった
樹は一気に自分が枯渇していくのがわかった
眠い
すごく眠い
樹は深く、
木の腹のなかで
眠り、深く沈んだ
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