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炎 ー樹ー
あの空が赤く燃えがったあの日
恐ろしい
怪鳥のような唸り声を上げた
大編隊が低空で街の上空へ到達
真夜中、空襲警報が鳴り響いた
だけれど
どこへ逃げ行けというんだろうか
逃れる先などない
豪雨のように容赦なく
鉄翼から
降り注いだもの
焼夷弾の礫
人に建物に地面に川に
ありとあらゆるものを2時間あまりの爆撃で
焼き尽くした
劇場に逃げ込んだ者
川に飛び込んだもの
夜が明けた
街で
遺された人々が目にしたのは
焼けただれ
重なり合った
かつて
人だった骸
家族の憩いがあった家
水を吸った死者の塊
川はもう、どこにも流れず
ただ底流した澱
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