8人が本棚に入れています
本棚に追加
木霊 ー樹ー
樹は木の中で
木霊の声となって
泣いた
父の背中を墓地で見てから
二十年ほど経っていたと思う
樹が声を震わすと
幹が揺れ
葉がこすれ合う
少し、木霊の声に雫がついて
地面にポタポタと
落ちた
父さん、長い旅に出たんだね。
何年か前に
兄さんたちも来たんだよ
兄さんたちね
僕に寄りかかって
話していた
広い海の話と広い大地の話
もっと、もっと聞きたかったけど
行ってしまった
なにか、とっても悲しくて
一番高い枝から見送った
もう来られないんだ
そう言うふたりの声は
残っている
最初のコメントを投稿しよう!