木霊 ー樹ー

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木霊 ー樹ー

樹は木の中で 木霊の声となって 泣いた 父の背中を墓地で見てから 二十年ほど経っていたと思う 樹が声を震わすと 幹が揺れ 葉がこすれ合う 少し、木霊の声に雫がついて 地面にポタポタと 落ちた 父さん、長い旅に出たんだね。 何年か前に 兄さんたちも来たんだよ 兄さんたちね 僕に寄りかかって 話していた 広い海の話と広い大地の話 もっと、もっと聞きたかったけど 行ってしまった なにか、とっても悲しくて 一番高い枝から見送った もう来られないんだ そう言うふたりの声は 残っている
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