九尾の狐

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洞穴を抜けると、まるで違う別世界だった 草木は枯れ果て、荒れ地に風が吹いているだけだ ここに元、琥珀の兄だった奴が居るのだと思うと 恐ろしくなる 「妖怪ってどんな奴だ、仁 聞いた所で応える訳ないか」 突然俺の足が何故か向きを変え、岩山の影に 隠れた 風向きが変わらない 突然川を目指し思いっきり走った 音を立てず、川に身を潜め 泳いだ その先に又洞穴が有る そのまま洞穴に向かい、泳いで入って行った 「臭いを消したのか 流石、仁は本当に機敏な狐なんだな 結界はどこにあるんだ?」 暫くすると川から上がれる所があった 川から岩の上に上がり、又洞穴を歩く 朝日が岩肌の隙間から見える 「もう朝なんだ、仁 急がないと!」 俺は焦ったが、仁は少し歩き止まった 目をこらすと、そこは赤い彼岸花がびっしりと 咲き乱れていた 「スゲ〜真っ赤な彼岸花が、絨毯みたいだ ん?彼岸花じゃない、血の池か! まさか人間の生き血.....ウッ血生臭い! やはり血だ、ここで人間を喰らうのか こんなに人間や仲間の血が溜まるのか どれだけ喰らったんだ!恐ろしい奴だな仁」 いきなり俺の足が、走り出し奥に進んだ 暗い小さな岩肌の隙間を通る 進むと結界があった 「仁!これが結界か?何て高いんだ空迄あるぞ それに鋭い棘で通れないぞ仁」 鋭い棘が行く手を阻み恐ろしい結界だ 阿闍梨の花を握りしめると、鋭い棘がバリバリと 道が開いて行く 俺はゆっくりと結界の中に入って行った どこ迄も続く鋭い棘の結界 バリバリ、ガサガサと音を立てながら道は開き 続く、後ろを振り返ると棘は元に戻っていき 道は消えてしまった 「いつ出れるんだ、この結界の向こう側に いつ辿り着くんだクソッ!」
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