九尾の狐

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どれ程の時間だったのか 気づくとあの森の中だった 「戻ってしまったのか!」 薄暗い森を歩いていると 何かが違うのに 気づいた 古民家が並んでいる 明かりも全ての家についていた 「どう言う事なんだ、違う場所なのか?」 そこに燃える様な紅地に狐面の柄の浴衣を 着て、髪を無造作なアップヘアーの女が声を かけて来た ドキッとする程、美しい女だ 「おかえりなさい、何してるの?」 「あのぅ分からないんです、ここは何処です?」 女はクスリと笑い 古民家の自分の家に招き入れた 「あのぅ......」 「今夜はお祭りじゃないの、もう呑みすぎたの?」 「えっ!いえ、たった今此処に来て お祭りって?あなたは?」 「何言ってるの? あなたの許嫁《いいなずけ》じゃない 嫌だわ」 何を言ってるんだ この女はおかしい奴だと思った 「お前が俺の許嫁だと?俺は彼女すらいないぞ! 誰なんだ!」 「お祭りに行きますよ」 「じゃあ、俺は誰か言ってみろ!」 「冗談ばかり言わないで、あなたは仁、私は雫」 「仁?雫?」 頭の中が混乱して訳が分からない 「婚約なんかして無い、雫なんか知らないぞ!」 「もう、冗談言わないで」 「ここは何処なんだ!」 「九尾の狐神様のお祭りじゃないの」 「クオのキツネ!?」 「きゅうびの狐の神様じゃない」 俺は無理矢理、浴衣を着せられた 黒地に白い狐面柄の浴衣を......
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