マラソン大会と雨と僕の片思い

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「マラソン大会、雨で中止にならないかなぁ……」  僕はそう呟くとため息をついた。足が人一倍遅い僕にとって来週のマラソン大会は苦痛以外の何物でもない。年に一度、皆に恥をさらすために強制的に参加させられるイベント。それが僕にとってのマラソン大会だ。去年に引き続き、二年生の今年もこの時期がやって来た。まるで心臓が鉛になってしまったみたいに憂鬱だ。  それなのにクラスで大っぴらにマラソン大会への不満を述べることもできない。なぜなら、クラスのリーダー格の海原君がマラソン大会を楽しみにしているからだ。  海原君は話が面白くてイケメンでサッカー部のエースだ。女子からの人気も高校で一、二を争う。 そんな海原君が口では、 「マラソン大会、ダリ〜!」 と言いながら、ウキウキとその日の放課後にクラスの打ち上げの準備を皆と進めている。とても本気の愚痴なんてこぼせる雰囲気じゃない。  僕は暗い気分で下校すると、高校の最寄り駅への途中にある書店に立ち寄った。小さな書店だけど、大きな書店に行かなければないようなニッチな書籍が棚に並んでいる。店主が本当に本好きなんだろうな、と親しみを感じて僕は気に入っている。  店内に入ると、数人の人が立ち読みをしていた。その中に僕と同じ高校の制服の女子がいる。同じクラスの神崎さんだ。 僕がこの書店を気に入っているもう一つの理由がときどき神崎さんと会えること。
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