マラソン大会と雨と僕の片思い

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 神崎さんはあまり目立つ外見の子じゃない。メガネをかけた地味な子だ。制服のスカートも短くしたりしないし、髪も真っ黒。その上、勉強もスポーツも取り立ててできるわけじゃない。  でも、神崎さんは一生懸命な人だ。どんなことにも一生懸命で、例えばクラスの他の女子が自慢話をしても、一生懸命会話に参加する。 「私、夏休みにフランスに行くんだよね〜」 と自慢した女子生徒に神崎さんはこんなことを言った。 「エコテロリズムの本場ですね。色々と見聞が広まりそうで羨ましいです。地球温暖化についての意識の違いとか現地にいかないとわからないことがたくさんあると思います。帰国したらぜひ教えて下さい」  その子は目を白黒させてうなずいた。 「う、うん。何かわかったら、教えるね。でも、先生に聞いた方がいいかも」 「大学の学園祭に行ったらナンパされちゃってさ〜」  と自慢した子に対してはこんな言葉を返していた。 「ナンパって良くないっていうイメージがありますけど、少子化問題がここまで深刻化している以上、男女の有効な出会いの手段として世間は認めるべきですよね。ナンパされやすくするためにはやはり制服でスカート短めが戦略上重要でしょうか?」 「……そうかもしれないけど、神崎さんはナンパされても付いて行っちゃダメだよ?」 その女子に半ば本気で心配されて神崎さんはキョトンとしていた。
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