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「ったく、どうしてこんなチンチクリン」  チッと舌打ちをした麗奈は悪態をついている。凛子はぎょっと麗奈を見た。 (ち、チンチクリンって私のこと!? そ、そりゃあ身長も低いし、美人でもなんでもないけど……でも、別にこれくらいの悪口へでもないもんね!)  凛子は口を尖らせながら麗奈の後をズンズンと大股でついていく。  凛子は悲しい事に悪口なら言われ慣れていた。中学、高校ともなれば凛子がイケメンの年上と仲がいいことを妬まれ、いじめにあったことも何度もあったのだ。  それでもいじめに耐えられたのは大好きな優の存在があったから。隣の家に住む優はシングルマザーで仕事が忙しくなかなか家にいない凛子の母に代わって凛子のことをなにかと気にかけてくれていた。  優にとって自分は年の離れた妹のような存在だということは重々承知している。それでも凛子は優のことを一度だって兄とは思ったことはない。ずっと、ずっと一人の男として優を見てきたのだ。念願の社会人になり、ようやく優の隣に立っても同じ大人として土俵に立てる気がしていた。
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