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「入りなさい」  ふんっと顎で誘導された凛子はそっと社長室のドアを開けた。 「失礼します……」  中に入るとワークチェアに座っていた優が凛子の姿を確認すると優しく微笑み立ち上がった。 「凛子、入社おめでとう。よく頑張ったね」  優は凛子の目の前に立ち、嬉しそうに凛子の頭を撫でた。 「社長。あ、ありがとうございます」 「社長だなんて他人行儀だな。いつものように名前で呼んでくれ」  身長の高い優は腰を曲げて凛子の顔を覗き込んだ。 「優ちゃん。ありがとう。そしてよろしくお願いします」 「うん。凛子のこれからの活躍、期待しているよ。念願の社会人だもんな」 「優ちゃんの力になれるように頑張るね」  優は目を細めて「あぁ」と頷いた。優は周りからクールだの、冷徹だのと冷めた印象を持たれやすいが凛子はそう思った事は一度もない。キリッとした瞳は笑うと優しくなる。凛子、凛子と優しい声で名前を呼んでくれる。凛子がまだ学生の時は勉強を教えてくれて、正解すると優は凛子の頭を優しく撫でながら「よくできました」と褒めてくれた。美味しいご飯だって何度も作ってもらったことがある。とにかく凛子は優に対してクールなイメージは一つもないのだ。
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