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 まだ六月だというのに、照り付ける日差しは真夏の熱気を思わせる。  この時期にこんなに暑いんじゃ、本格的な夏が到来したらどうなってしまうんだろうと、この星に対して過度な心配をしながら僕は、額に大粒の汗を浮かべた状態でお店の扉を開けた。 「おかえりー」  外の暑さに全く影響されないドアベルが軽快な音を鳴らすとともに、少し離れたところから僕に向けられた声が聞こえる。 「ただいま戻りました」 「お疲れさま。外は暑いでしょ? とりあえず座って」  言われるがまま、僕は持っていた買い物袋を空いている椅子に置いて、シャツの袖で汗をぬぐう。  店内は冷房が効いているけれど、弱冷房車のような設定なので、そこまで涼しくはない。 「今日は特に暑いですね。地球が体調不良になっちゃったんじゃないかと、心配になるくらいです」 「(れん)くんって、ときどきすごくスケールが大きいことを言うよね」  そう言って静かに笑うのは、このお店の責任者である、今井(いまい)千鶴(ちづる)さんだ。  千鶴さんのこの笑顔さえあれば、僕が体調を崩すことはないんじゃないかと思うくらい、千鶴さんは今日もかわいい。
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