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「大きい欠伸して。何処へ行って来たって?」
「河口湖辺り。天空の鳥居とか」
「天空…って前も行かなかったかね」
「あれは天空の城ね。竹田城って山城。朝霧の中に浮かんでいるように見えるっていう。行いが悪いのか見えなかったけどさ」
「山歩きは楽しいかね?」
「今回はドライブがてらだったからなぁ。楽しいっていうか、楽しくはないっていうか…」
「なんだね。楽しくもないのに」
「うん…そうだね。確かに。なんかさ、目的地は逃げないんだけど、追いかけて、追いかけて、捕まえたっ。みたいな、無心っていうか、ん、無心で歩いてる気する」
「無心とはねぇ。リクが無心で歩いてる顔を見てみたいよ」
「あ、ばあちゃん、馬鹿にしたな」
「褒めた褒めた」
「そうは聞こえませんでした」
「リク、お前、今日はまた出掛けるの?」
「出ない。ダラダラしてる」
「それなら、一寸草取り手伝っておくれ。追いかけっこだよ」
「草取りが追いかけっこ?」
「そうそう。私が綺麗に取って、やれやれと思ってるうちにもう小さい芽がちくちく生えて来て、きりがないさ」
「うん。いいよ」
「無心でやっておくれ」
ばあちゃんはそう言って笑った。
よく働き、よく食べ、よく笑うのが健康長寿の秘訣らしい。
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