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渡り鳥
草と追いかけっこか…。
そういえば、ワンゲルサークルのタメには、桜前線を追いかけてる奴。桜の種類は200とも500種ともあるらしい。山城通の奴とか、インスタ映絶景スポット発見が趣味の奴とか、山歩きを兼ねて的な、アウトドアなオタクっぽい奴が集まっている。
ワンダーフォーゲルってのは、同じ山登りでも登頂、踏破に特化した山岳部とは違って、山に限らず、自然環境下で目標設定や計画を立て、仲間で活動するのが基本方針で、奴らの閃きや行動力はまぁまぁ面白い。
意義としては、非日常的な自然環境での仲間との体験を通して、人間性の成長を得るってことらしいけど、俺に関してその辺りは、まだ全く定かではない。
大体俺は、ワンゲルとは縁もゆかりもなかった。
小四からテニスを始め、中学でもそこそこやれていた。勿論、高校に入ってもテニス部だ。
2年の春、さぁこれからという時、試合中にそれは突然やって来た。
イップスかと思ったが、いわゆるテニス肘というやつだ。思いがけない休養とリハビリの日々。
高校時代、部活動に熱中出来る時間は酷く短い。
俺は多分、かなりクサっていたと思う。
「リク、一寸天空の空気を吸いに行かないか?」
と、声を掛けて来たのはクラス担任で、ワンゲル顧問だった。
「別に、いいですけど…」くらいに返事をした。
10月も半ばを過ぎた頃だった。
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