勇敢なラインマンは女子に敵わない

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勇敢なラインマンは女子に敵わない

勇の心の彼女はスマホ恋愛ゲームの妹キャラ『いさみ』。 名前は任意で入力できたので、自分の勇という名にちなんで『いさみ』と名付けた。 童顔で垂れ目。 いつもユサユサと揺れている巨乳に、長い茶髪のストレートヘア。 短いスカートからは肉付きのよい太ももが露わに見える。 それがいつも谷間を見せながらすり寄って来るのだ。 「お兄ちゃん、あたしねぇ…」 髪が揺れる、胸が揺れる。 勇は何でも揺れる物が好き。 ロリコンで10代の若い女子高生が一番好きだ。 それを満たす存在が、『いさみ』だった。 なぜ好きなのか、と聞かれても答えられない。 年下の巨乳女子高生が好きな理由があるのだとすれば、それは本能としか言いようがない。 そして、そういう需要に応える産物は世の中に溢れるほどにあった。 さすがに新しく入るといわれた調理補助の人材が、年下巨乳女子である可能性を期待する事はなかったが、それでも『若い女の子』という言葉に胸が高まった。 期待しないでいる方が難しい。 朝起きて、いつもより張り切った気分で食堂に向かった。 中に入ると、いつものむさ苦しい連中の顔が見える。 「おはようございます」 「お、Pちゃんおはよ」 勇は皆からPちゃんと呼ばれていた。 トレーを持って、列に並びバイキング形式の朝食をトレーに乗せていく。 平皿を二つ乗せて、そこに丸パン、オムレツ、プチトマトを乗せた。 そのまま白米も盛り、焼きシャケを乗せ、白菜漬け、肉じゃがを何も考えずにゴチャゴチャと盛っていく。 チラリと覗いた調理場にいつものおばちゃんが見える。 必死で新しい人を探した。 見当たらない。 一旦トレーを空いたテーブルに載せて、列の二周目に入った。 トレーにスープ皿を二つ置き、そこにコーンスープと味噌汁を入れた。 和洋折衷の朝ご飯だ。 腹が満たされれば、何でもいい。 質より量。 「あ、春日ちゃん。ねー、ここに独り者の兄ちゃんいるんだけどさ、どうよ?」 課長の長澤さんの声が聞こえた。 その声の方を見ると、白い三角巾を着けた棒人間が見える。 顔はメガネとマスクで覆われて、正体はわからない。 体に凹凸はなく、平面的で長い髪など見当たらなかった。 瞬時に新しく入った、調理補助の女性だとわかった。 けれど、期待を大きく外れて地味で華のない彼女には、勇の理想とする巨乳も茶髪のロングヘアもない。 スープ皿の載ったトレーをテーブルに運んでから、課長の方へ歩いて行った。 「ども」 ただそれだけ言って頭をペコリと下げた。 すると棒人間のような女性が、メガネの奥のキラキラした瞳でニッコリ微笑んだ。 「おはようございます。今日も一日頑張ってください」 勇はリアルな三次元の彼女に面食らった。 自分の理想とはかけ離れた彼女のそのリアルな瞳と声が、自分を動揺させる。 揺れる物も何もない彼女のせいで、勇の心が揺れた。 リアル女性の威力はすごい。 「あ、ありがとうございます」 直角で頭を下げて、ギャラリーの爆笑を誘った。
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