願い

3/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「優さんは、昼は食べたの?」 と聞くと、 「まだです」 と優さんが答えたので、 「食べてください」 と言うと、 「それではそうします」 と優さんは言って、部屋を出ていき、皿にのったおにぎりを持って戻ってきた。 「自分で作ったの?」 と聞くと、 「いえ、文さんが朝、昼用にと持ってきてくれました」 と言ってから、 「いただきます」 とおにぎりを食べ始めた。 (今度は食事を持ってこよう) と思っていると、 「花さん、万さん」 と優さんは、一口お茶を飲んでから、 「あさってから京に行ってきます」 と言ったので、 「えっ」 と2人で驚いていると、 「先日永井屋さんが家に来て、京で絵を描いてほしいと頼まれました」 と優さんは、笑顔で言い、 「そうだ」 と言って、机の引き出しから紙を2枚取り出した。 「こちらが花さんで、こちらが万さん」 と言って、芍薬の描かれた絵を私達に渡した。 私は赤で、万は白である。 「ありがとう」 と私達は、お礼を言ってじっと絵を見て、 「優さんだと思って大切にします」 と私が言うと、 「えっ」 と優さんが驚いた顔をしたので、自分が言ったことに気付き、恥ずかしくなって顔が赤くなるのが分かった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加