願い

4/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「それはうれしいです」 と優さんは、笑顔で言った。 優さんの旅立つ日。 優さんの家には、見送りの人がたくさん集まっていた。 「優さん」 と私は、声をかけて近づく。 「花さん」 と優さんは、私の方を向いたので、 「これ」 と言って、昨日貰ってきたお守りを優さんに手渡す。 「花さん、ありがとうございます。  これで無事に帰ってこれます」 と優さんは笑顔で言って、深く頭を下げる。 「気をつけてね」 と私は、泣くのを堪えながら言うと、 「はい」 と優さんは笑顔で言い、 「それでは皆さん、いってきます」 と言って、集まった人達に深く頭を下げて、垣根の入り口を出ていった。 優さんの後ろ姿が見えなくなるまで、各々声をかけていた。 私は、 「早く帰ってきて」 と大きな声で言っていた。 (早く会いたい) と優さんに貰った赤い芍薬に向かってずっと願っている。 「雨、降って」 と願う日が早くくることを望んで。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加