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記憶のカケラ
シューシューと流れ込んでくる酸素の音。
下腹部に刻まれた鋭い痛み。
途切れ途切れの意識の中で、誰かが私の手を握り、声をかけてくれている。
──君はどんなことがあっても、生きなきゃだめだ
温かい大きな手だった。
あれは渓の手だったのだろうか。
次に目を覚ました時、彼は息を引きつらせ、私の額に自分の額を押し当て泣いていた。
「未希‥‥未希‥‥ごめん」
ひどく矛盾した残酷な仕打ち。
それでも渓は、私のたった一人の大事な家族。
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