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「マジでびっくりしました。そんな企画が密かに進行していたなんて。彼女が出て行ったときはマジで焦ったんですよ」  尚樹はスタッフと談笑しながら先程のことを振り返る。その姿を見ていると私までも嬉しくなって。 「あ、そうそう、なぜか靴箱にスニーカーがなくなっていたんですけど、あれも仕込みですか? 俺のお気に入りのナイキのスニーカーとかもなくなってて。あれ学生のときに買った大事なやつで、返してほしいんすけど」  そうディレクターさんに尋ねている尚樹。 「それなんだけどさ、スニーカーに関してはこっちではなにもやってなくて」 「え? どういうこと?」 「いや、藍華さんが」  皆が私を見る。さっきまであんなに和やかな雰囲気だったのに、空気が変わっていく気がした。私は表情を変えないようにしながらも、着実に心臓の高鳴りを覚えていた。 「どういうことどういうこと?」 「……いや、あの、実はさ、尚樹のお気に入りのナイキのスニーカー、オークションサイトで、売りに出してて」 「は? は? いやいや、は? お前、マジで言ってんの?」 「だって、喧嘩したときにムカついたから、つい」 「ついじゃねーよ、お前! あれプレミア付いてんだぞ! まだ一回も履いてねーのに、ふざけんなよ!」 「……ごめん。でもさ、プレミア付いてるだけあって凄く高値で売れてね、十万円だって」  ペロリと舌を出して許しを()う。でも尚樹の怒りは収まらなかった。  ツカツカとこちらに歩いてきた彼は、私が大事に持っていた祝儀袋をひょいと奪う。 「ちょっと待ってよ、その賞金は……」 「これは俺がもらう」 「ちょっと!」  私が声を出したときにはもう、彼はすでに走り出していた。履いていたサンダルを脱ぎ捨てて。 「ちょっと待ってよ!」  慌てて追いかける私。そのすぐ後ろで、アナウンサーさんが張り上げる声が辺りに響いたのがわかった。 「なんと、なんと、なんと! 第二ラウンドの始まりです! さあみなさん、二人を追いかけましょう!」
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