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「え、え、え? なに? なにこれ?」  慌てふためく尚樹。何度も私とカメラを見比べている。 「おめでとうございます! 藍華さん、この企画大成功です!」 「企画? は? なんの?」 「ありがとうございます」 「それでは賞金十万円を贈呈させていただきます。どうぞ」  手渡された祝儀袋。中には本当に現金が入っていた。 「なんだよこれ、なあ?」  パニックになりながら状況を確認しようとする尚樹。無理もない。普通なら起こらないような事態だ。 「実はですね、これは『追いかけて彼氏』という番組企画でして。喧嘩をして出て行った彼女を最後まで追いかけることができるか、という企画なんです。ゴールまで追いかけることができればチャレンジ成功ということで賞金を差し上げると、そういったことになっております」  アナウンサーが丁寧に企画内容を説明すると、尚樹は驚いた表情とともに合点がいったように右の拳で左の手のひらを叩いた。 「それって、もしかして、俺が前に企画として出したものじゃ?」 「ご名答です! そうなんです。尚樹さんの企画が採用されまして、今回番組として始まりました。そして、なんと次回からですね、尚樹さんにも構成に作家として参加していただくことになりました」 「え? 俺が、ですか?」  知らされていなかった事実に私も驚く。周りのスタッフが拍手を送っている。  まだドッキリだと勘違いしている尚樹はあまり喜びを出せないでいた。だから私が代わりにそれを表現してあげるように彼に抱きついた。冷たいTシャツの温度が伝わる。  信じてよかった。やっぱり私は、尚樹じゃなきゃだめなんだ。 「なんか、よくわからないんですが、とりあえずありがとうございます」  スタッフに頭を下げ、番組は無事に成功を収める。「はいオッケーです」というディレクターの声にようやく笑みが溢れる尚樹。
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