act.1 ★

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「何って?」  質問の意図が分からず、思わず聞き返してしまった。  彼女はスマホから視線を外すことなく言った。 「深い意味はないよ。 ただ何か会社員とかにも見えないし、こんな時間に人気のない公園で一人で居るなんて変だなって」  ──それはそのまま貴方にも言えますが。  そんな野暮な言葉は飲み込んだ。 「……劇団やってる」 「劇団?」  彼女の目が、スマホを離れてこちらを向く。 「あ、でも別に有名とかじゃなくて。 まだバイトもしてるし、ファンがいるとかそう言うのじゃないけど」  慌てて取り繕ってしまった。  ダサい言葉だ。  昔は誰に対しても夢を語れたが、いつの間にか、歳を重ねるにつれてそんな事出来なくなってしまった。  どうせ否定される。 どんなに真剣にやっていても、金を稼げずバイトに頼ってる内は趣味と同義にされてしまう。  決して趣味で舞台に立ってるつもりは無いのに。 「劇団かぁ」  ふわっと月明かりが届き、一瞬の間だけ彼女の姿を明るく照らした。 「いいね」  まん丸い目を細めながら、真っ直ぐな笑みでこちらを見る。  それはまるでスポットライトに当たっているような、そこだけ切り取られた非日常の様な、そんな風に感じた。 「……ありがとう」  そんなありきたりの言葉しか返せない自分が、また少しだけ嫌になった。  再び彼女はスマホの画面へ視線を落とし、静寂に包まれたのもつかの間、ポケットからトークアプリの着信を知らせる音が鳴り響いた。 「ごめん」  向こうもスマホを見ているし特に必要はないだろうが、一応横に居る彼女に断りを入れてポケットからスマホを取り出す。  画面を見ると、航大からの着信だった。  
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