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異常の原因
ダメ元で、水戸氏に何かしらの対抗策の案があるかを訊ねると、案の定、彼は弱々しく首を横に振った。
それもそうだ。でなければ、見ず知らずの外部の人間に助けを求めるようなことはしないだろう。自らの浅慮を戒める意味も込めて、私は思考を整理し、巡らせた。
まず第一に、確かにここ数年の梅雨は短い。だがこれはあくまで気象科学で説明がつく。
更に言えば、何もここ一帯に限った問題ではなく、今や世界中で異常気象が云々と騒がれている。場所によってはそれこそ天災の域だ。日本の梅雨の短さも、そのうちの一つに過ぎないと判ずるのが妥当である。
しかし頭ごなしに否定すれば、この町に根付く信仰を根底からへし折ることになる。伝統を正しく残すという観点から見ても、真実を告げることは必ずしも最適解とは言い難い。
そもそも門前払いが関の山だ。
では、その信仰に重きを置いてみるのはどうだろうか。信仰は神の力の根源そのものだ。信仰が禁忌によって捻じ曲がっている以上、神は力を発揮できないだろう。
もっとも、正しい信仰心が注がれたとして、本当に雨が降るかどうかは、まさしく神のみぞ知るところではあるが。
一番重要かつ現実的なのは、本来の豊雨祭を取り戻すこと。
大量の臓物を、水神の象徴とも言える河川に流さず社殿に詰め込んだのは、僅かに残った現代人としての人道的な判断故だろう。
町民も、これが禁忌であることが承知の上であるならば、どうにもできないことはないかもしれない。
「今年の豊雨祭はいつですか」
「六月の第四土日なので、今年は二十四、二十五日です」
あと三週間はある。少々強引かもしれないが、根回しは間に合いそうだ。
「水戸さん。少しお力を借りられますか」
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