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1. 夏の神
「風の神・セフィロス様と虹の神・アイリス様の子で、夏の神セリノスと申します。どうぞ皆様、お見知り置きを」
夏の日差しを思わせるような金色の髪に空色の瞳を持つ少年は、目の前に迫り来るヘルハウンドに向かって大きく腕を振り上げる。
「ギャンっ」という断末魔の鳴き声だけを残し、ヘルハウンドは大きく2つに引き裂かれた。その傷口からは肉の焼ける匂いと共に、煙が立ち昇っている。
アイリスがかつて、そして今でも出来ない事をその少年はいとも容易くやってのけ、招待客に一礼した。
風の神殿にある会場は、あっという間に招待客たちの拍手と歓声でいっぱいになった。
「ふぅ、良かった」
会場の端で見ていたアイリスは、ホッと胸を撫で下ろす。
事前に練習しておいたので大丈夫だと分かってはいても「もしかして駄目なんじゃないか」と、この瞬間までずっと気を揉んでいた。
そんなアイリスの心配をよそに、セリノスは見事に一発でヘルハウンドを殺してみせた。親の自分は見ているだけでも怖くて、こんなに冷や汗をかいているというのに。
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