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ハッとリアナの顔を見ると、真っ直ぐに見つめ返された。
「水に流して忘れましょう。あなたからダインの記憶を消してあげるわ」
水流しの術。
アイリスの家を建てた職人にもこの術をかけて記憶を消していた。
これまでのことを全て忘れてしまえば……
そうしたら体に残るこの感覚を忘れる事が出来る。罪の意識に苛まれなくて済む。楽になれる……?
「……いいえ、それならダイン様を忘れない事が私の罰にして下さい。私だけ忘れて何事もなく暮らす事など出来ません」
「はぁ……そう言うとは思ったけれど……。一生部屋に閉じこもって過ごすつもりなの? そう言う訳にはいかないでしょう。時間が必要なのは分かるわ。でもセフィロスには会いなさい」
「セフィロス様には……セフィロス様だけには会いたくありません」
「アイリス大丈夫よ。あなたがあの日ダインに会ってしまったのは偶然で、無理矢理連れ去られたという事はちゃんと知っているから。セフィロスは怒ったりしないわ」
「叱られるのが怖いんじゃないんです……そうではなくて……」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
アイリスがセフィロスに会いたくないのは命令を破って怒られるからじゃない。
他の神の手にかかったからじゃない。
あの日からずっと頭を離れない。
『離縁』
の2文字が。
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