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日が少し傾きかけてきた。主から頼まれていた使いを終えて、ソフォクレスは馬を疲れさせないようのんびりと家路につく。
ソフォクレスの家は愛の神殿。愛の女神・ヴィーナスが住まう処だ。
「ここはのどかで良いねぇ」
誰にという訳でもなく、強いて言うなら今乗っている愛馬に話しかける。
小麦畑が夕陽に照らされて、キラキラと黄金色に輝くその先に家が立ち並び、更に向こうには山々がそびえている。その中を少女と少年がロバを引いて歩いているのが遠くに見える。まるで絵画を切り取ったかのような光景にソフォクレスはホゥっと息をつく。
愛の神殿は婚姻やもしくは離縁の手続きをしたりする様な場所なので、年中天使がひっきりなしに出入りしている。
実際にはそう言う婚姻に関わる届出は、少し大きめの街にある役場にでも出せば、その土地を管轄する神殿で纏めてヴィーナスの元へと持ってきてくれるので、わざわざ愛の神殿まで出しに来る必要は無い。
それでもカップルがこぞってやって来るのは、愛の神殿に直接届出を出すと『永遠に幸せな結婚生活を送ることが出来る』とか言うウワサが出回っているからだ。
そんなウソかホントかよく分からないウワサを信じてやって来るラブラブカップルを見るのもまた楽しいし好きだけれど、たまにはこういう田舎町を見るのもまた心が和む。
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