Episode of ヴィーナス

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 しばらくぼんやりと景色を眺めながら馬を歩かせていると、遠くの森の中から小さな点が飛び出してきた。  ドッドッドッと重そうな音を立てて走るその点は、ロバを連れた男女の元へと一直線に向かって行っている。  ――カトブレパス!!  一見すると水牛のような姿だが、豚の様な頭部と巨大な角を持つ青毛の魔物だ。  ソフォクレスの背筋にヒヤリと冷たい汗が伝う。こんな田舎町には衛兵なんてものはいない。 ゴクリと唾を飲みこむと背中から弓を取り、狙いをカトブレパスに定める。  ヒュっと言う弓音と共に矢がカトブレパスの方へと飛んでいくが、外した。その後に続けて飛ばした2本目の矢が臀部に当たったが、駆けている足の速度は変わらない。 (矢だとダメージが低すぎるな。)  ここでようやく少女と少年がカトブレパスの存在に気付いたようで、悲鳴をあげながら走って家が立ち並ぶ方へと逃げていく。  ソフォクレスは馬をカトブレパスの近くまで走らせ飛び降りる。  ガキンっ!!  着地と同時に抜いた剣の切っ先は、カトブレパスの角に当たり鈍い音をたてた。衝撃で肘にビリビリとした痺れが走る。剣を落としそうになるのを何とか堪えて、首を狙って剣を振り落とす。  カトブレパスは動きこそ緩慢だが、パワーがある。ちょっとやそっと斬ったぐらいでは埒が明かない。  何度か斬り付けた所でよくやくカトブレパスが地面にドサッと転がった。それを剣先を立てて首に突きとどめを刺す。
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