怪異集まる宝石喫茶

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「逃げてるの?」 黒のタイツが破れていないかを確認しながらピンク髪の少女が言った。 「あ、あぁ」 どうせこの子もストーカーになる。そう疑っていたのに、目の前の少女は愛想というものがない。しかしストーカー達と違って知性だけはあるようで、3方向からやってくるストーカーを見てだいたいの事情を察した。 「こっち、ついてきて」 「えっ?」 「見つかりたくないなら従え! ついてこないなら助けない!」 少女に怒鳴られた。妙に迫力があった。 普通なら初対面の彼女を信じないだろう。彼女がストーカーでない保証はない。こうして一人味方のふりして連れ出すつもりなのかもしれない。 なのに信じようとしている自分がいる。見つかりたくないし助かりたい。しかしすぐには動けない。 真夏は硬直していると少女は手を引いて商店街へと向かった。 アーケードのある商店街のため夕日は遮断される。街灯のつく前なのでちょうどよく暗い。しかしこの暗さだって真夏の姿は隠せやしないはずだ。 よりにもよって人の多い商店街へ逃げ込むなんて。しかも少女は寂れた本屋の隣に立ち読みしているていで立つだけで、小柄な彼女の体は真夏を隠そうともしない。 「これは……」 「見つかりたくないなら黙って。声は誤魔化せない」 そう言われればこれは彼女なりの裏技めいた身の隠し方だと思えてしまう。真夏は声どころか息すら出さないようにする。 「いた?」 「ううん、いない」 「どこに逃げやがった」 「確かにこの商店街に入るところまで見たはずなのに」 ストーカー達は次々と本屋を通り過ぎていった。確かに視界に入っていたはずなのに、誰も寂れた本屋にいる真夏に気付かない。 「移動するよ。物音はなるべく立てないで。で、私の左手掴んどくの。できる?」 『左手?』と真夏は口パクで尋ねる。少女の左手には白い石の指輪があるだけだ。 「もう喋っていい。あと従わなくてもいい。よく考えれば私が助ける義理はないし」 少女はため息ついて手を離そうとする。しかし真夏は逆にその手を掴んだ。
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