怪異集まる宝石喫茶

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「……あんたの状況は異常に人に好かれること、でいい?」 「お、おお」 「性別も立場も、何も気にする事なく好意を伝えてくる。あんたが学校終わるまでの時間は皆普通なのに、それが終わった途端に問題行動を起こす、とか」 「すごいな、その通りだ」 この店員とはさっき会っただけの存在だ。なのに今まで見てきたかのように語る。それはこの状況を当事者よりも把握しているということだろう。 「あんたって不思議なことはどれくらい信じられる?」 「もう何言われたって信じるよ。不思議な事で困ってて、店員さんの不思議なことで解決したんだから」 「その不思議は石が関わってる」 どんな不思議だって受け入れられる、真夏はそう語ったものの、いきなり『石』と言われてもピンとこない。 「それってパワーストーンとかお清めの石とか、そういうやつ?」 「私はあんたに何も売りつけたりしないし勧誘もしない。ここでいう石ってのは『不死石』っていうもの」 「フシイシ?」 「死なないって意味。不死の石」 これは霊感商法や宗教勧誘ではないかと真夏は身構えたがそうでもないらしい。しかしやはりうさんくさい。しかし店員は勧誘用の商品もパンフレットも出すことなく掃除を再開しだした。 「持っていれば死なない、ってこと?」 「違う。死なないから石になったってこと」 「石って生きてるんだっけ?」 「……一般人に説明って難しいな。ここで言うのは不思議の石の話。世間一般の石とはまったく別物。それを持っているから不思議な事が起きるってこと」 話の通じなさに店員はいらついているようだった。しかし誰が聞いてもこんな話をすぐに理解できないだろう。 つまり真夏が異常にモテるのは不死石というものが原因。パワーストーンの逆かもしれない。 「つまり呪いの石ってことか……」 「のろいもまじないも使い手次第。あんたのその状況だって承認欲求に飢えたやつなら使いこなせるものだよ」 「まじか」 確かにあれだけ好き好き言って追いかけてくる存在はネットの世界でならうまく扱っていい思いができるかもしれない。しかし真夏はSNSはやったことがないし、まったく知らない他人からの好意なんてどうでもいい。
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