ナポリタン

24/26
前へ
/74ページ
次へ
「橘に休めと言ったところであいつは聞かない。ならば条件をつけて動ける日を用意する。それならその日に専念するためしっかり休むからな」 「あぁ、わかります。橘ってそういうところあります」 橘は夜に起き朝に眠る。そうと決めたら絶対に途中で起きることはない。そういうふうに不死石になる日を決めておけばその決まりは守るはずだ。 「その橘が働く日が減るようお前達は店を継ぐための勉強をしろ。そして橘が休んでいるあいだ、怪異達から何かあればお前達が聞け。そして橘に負担が少ないようまとめておけ」 「まとめる?」 「可能なら自分達で解決していい。要は助手だ。お前達の都合など関係はなくこの店に悩める人間や怪異はやってくるのだから」 あ、と真珠達はその事を思い出す。橘の心配ばかりして、この店に来る客の事は忘れてしまった。 招き猫は商売を第一とする。まず彼が気にしていたのだってこの店の経営なのだから。しかしその考えから今どうするべきかが導かれていく。 店は完全閉店とはいかないが、週に2日だけ開ける。その予定に合わせて橘を石の姿から怪異の姿にする。橘は制限をつけたほうがきっちり休めるから。 そうして橘が確実に動けるうちに真珠達が喫茶店経営のノウハウを学ぶ。これは長期的な作戦で、最終的にはかなり少ない日数で橘が店に立つのが目標だ。最初は何もできなくても仕方ないし、最終的には橘が動く。 そうなるまでは真珠と真夏とで情報をまとめてできることをしておく。 要は橘の負担を減らすというのがこの作戦だ。 「負担を減らすだけで、橘は大丈夫なんでしょうか?」 「橘の状態は消耗の原因はなんでも自分でやり期待すらも背負うところだ。あいつさえ休めばよくなる。そして誰かを頼る事を覚えれば消耗も減る」 休めばよくなる。そしてこれからは真珠達でフォローをする。全ては橘の英雄としての性質が悪いので、誰か他の人に救われれば考えをかえてくれるはず。 「やります。私、ずっと橘に恩を返したいと思っていた」 それはずっと前からの真珠の思いだ。しかし橘には趣味嗜好というものがない。一人で何もかもを解決してしまう。やっと恩を返せるチャンスがやってきたのかもしれない。 「それなら俺だってそうだ」 真夏も同様。さらには元から興味のある分野である。こちらから弟子入りしたいと思っていたほどだ。 「よろしい。では、まずは開店時間変更のお知らせを作るところから始めよう。橘の説得も任せておけ」 招き猫はにんまりと笑った。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加