ナポリタン

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「次の持ち主が男性になるなら作り変えなきゃいけないよね。今のブローチは女性的ってわけじゃないけど不審がられそうだし。ネクタイピンとか……」 「あぁ、それいいな。真珠に任せて良かったって、橘さんもきっと思うよ」 「そうだといいんだけど」 まだ男性が持ち主になると決まったわけではない。しかしもう真夏はそのつもりだ。橘もその案で進めるだろう。それだけの力が真珠の作品にはある。 「この指輪もめちゃくちゃいいし。作り変えてから見つけて欲しい人にだけ見つけてもらえるっていうかさ。前よか透明人間っぷりが都合よく和らいでるかんじ」 真夏は左手の薬指を真珠に見せた。細身の指輪に小さく白い石が入っている。透明人間のように目立たなくなれる指輪なのでずっとつけるわけにはいかなかったが、作りかけてからはそんな事はない。目立たないが親しい友人とは普通に会えるのが以前までの不死石の効果だった。しかし新たな姿になってからは新しく気の合う友人など多く出会えるようになった。まるで縁結びの指輪のように。より都合よい効果になって、真夏はほとんどずっとつけている。 「もともと不死石は人間に愛でてもらうのが一番いいから。能力だって人間の得になるようになっているから、今の真夏にあうような能力になったのかも」 真珠も自分の薬指にある指輪を見て言う。この指輪をつけてから良い人ばかり出会う。さすが縁結びの指輪だ。 「でも真夏、本当に左手の薬指のもので良かったの?」 「結婚指輪なんだから左手の薬指だろ」 「いや怪異式の結婚だし……」 真珠はノリの悪い言葉を返した。彼女にとってこのやりとりは二人だけに通じる怪異式結婚ジョークとし、最近は飽きつつある。 本気が混ざった真夏はがっくりと力が抜けた。だが二人で橘を救うと決めた。それもかなり長期的な作戦だ。それは怪異式結婚よりも強い絆で結ばれなくてはできないことだろう。 二人の指輪につけられた不死石は、ジョークに笑ったように輝いた。 END
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