(4/11加筆修正済)色は匂へど 11

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(4/11加筆修正済)色は匂へど 11

前置き 『重なる月』『密月旅行20』~とのリンクです。一緒に読んでいただけると嬉しいです。https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=623 4/11加筆しました。 ****  豪快に泳ぐ流の姿を、僕は岩場に座りながら見守った。  こうやって流が泳ぐ姿を直接見るのは、いつぶりだろう?  流は幼稚園から水泳教室に通い、僕はよく水泳大会の応援に行った。小学生の間は僕を見つけると嬉しそうにブンブン手を振ってくれたが、中学に入ってからは目が合うと恥ずかしそうに俯いてしまったね。でも、いつも流は誰よりも速く泳いで、一番だった。    いつだって逞しかったよ。  自慢の弟だった。  だから、僕の胸はいつだって高鳴っていたよ。  そして今日も高鳴っている。  さっきから五月蠅いほどに。  自分の胸に手を当てると、とんでもない早さだった。  静まれ、僕の心臓!    僕は目を閉じて深呼吸をした。 「ふぅ、さっきは本当に危なかったな」  丈が際どい水着を旅先に持参したのがきっかけで、洋くんと喧嘩しそうになったので仲裁してあげたら、まさかこんなことになるなんて。  何故か、僕が水着を脱いで褌を身に着けることになり、それを流に手伝ってもらう羽目になった。  その更衣室で……まさか、あのような反応が起きるとは。  心を無にして平常心を保とうと努力したが、流の指先が前袋を整えるために触れた途端、下半身にギュッと血が集まった。  まずい!   この反応は――  心の中で必死に読経して気を逸らそうとしたが、嵩を増していくのを止められなかった。  もう駄目だ!   このままでは流にばれてしまうと観念したが、突然流がぽたぽたと鼻血を出したので難を逃れた。  あのままだったら、どうなっていたか。  あぁ、ついに流の目の前で淫らな反応をしてしまった。  自分を律しきれなかった。  こんなこと仕出かすなんて、きっと最近忙しくて自分で処理する時間がなかったせいだ。もともと性欲が少ないのか、離婚後も特に困ることはなかった。時折溜まれば、機械的に出すだけだったのに。  自分に必死に言い聞かせるが、一向に興奮が収まらない。  豪快に泳ぐ流の肩甲骨の動きをぼんやりと眺めていると、再び股間のモノが硬くむくりと屹立していくのを感じた。  あっ、駄目だ。  また苦しくなってきた。張り詰めてきた。  もういい加減に認めた方がいい。  翠……  お前は弟に欲情している。  弟に性欲を抱いているのだ。  自分に素直になれ。  そこに追い打ちをかけるように、岩場の向こうから……  実の弟と、その同性の恋人の情事の声が聞こえた。  耳を澄ますと激しくぶつかり合う肉体の音、卑猥な水音まで聴こえてきた。 「ふっ……あぁ…あ……丈、よせ……もう……」 「洋、いいぞ、このままいけ」  男と男が営む。  これは夢物語ではなく、現実なんだ。  男と男でも、心のままに肉体を求め合えるのだ。 「あぁ……うっ」 「くっ」  果てていく声に、全身の血が逆流し、汗が噴き出る。  僕も解き放ちたい。  この狂おしいほどの熱い思いを――  僕はそろりと手を股間に伸ばして張り詰めたものを握りしめた。  そして己の身をゆっくりと慰め始めた。 「うっ……う……」  流……流……流!    打ち寄せる波音に紛れて、弟を求めた。
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