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色は匂へど 20
前置き……
今日のシーンは『重なる月』では翠視点でしたが、こちらでは流視点です。萌えをマシマシで書き下ろしました。リンク先『蜜月旅行 56』~です。https://estar.jp/novels/25539945/viewer?page=659
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悪いとは思ったが、意図的に丈と洋に酒を熱心に勧めてしまった。すると間もなく洋くんは酔い潰れ丈もかなり酔ったようで、部屋に帰っていた。
いよいよ始まる。
俺は愛しい人の名を呼んだ。
「……翠」
「な……に?」
「覚悟は?」
翠の身体が強ばっていくのが分かった。
表情も強ばって……
俺は翠の頬を両手で包んで、優しく囁いてやった。
「翠、そんなに緊張するな。大丈夫だから」
「流……だがっ」
「とりあえず俺達の部屋に行こう」
「……わかった」
テーブルの上の食器を片付けている間、翠はぼんやりと俺を見つめていた。
「さぁ、立てるか」
「……無理だ」
きっと扉の向こうで繰り広げられる情事を想像し怖じ気づいたのだろう。
翠の心の内側が手に取るように分かる。
ずっとずっと傍にいたから。
「流……僕……身体に力が入らないんだ」
「大丈夫だ。翠はそのままでいろ。ほらっ」
俺は翠を軽々と抱き上げてやると、翠も手を回して寄り添ってくれた。
「流、落とすなよ」
「翠……ありがとう」
そのまま部屋に連れ込み、ベッドにそっと落とした。
いよいよだ。
月明りを浴びながら、俺は翠に背を向けてTシャツを脱ぎ捨てた。
月光を浴びた背中に、翠が息を呑んだのが分かった。
翠のために鍛えた身体だ。
よく見てくれ。
俺は翠のためにここにいる。
俺の全ては翠のためにある。
「どうして……」
「どうした?」
「どうして僕たちは再び兄弟で生まれたのかな……」
確かに男同士でも兄弟でもなかったら、こんなに遠回りしなくても良かった。
俺は翠の腰を跨ぎながら、身をかがめ翠の耳元で優しく囁いた。
「それは……どんな時でも翠の一番近くにいられるからだ。さぁ今は一人の男として俺を見てくれ。抱くぞ。今から俺は翠を抱く。俺たちは繋がるんだ」
翠は覚悟を決めたようで、無言で頷いた。
「翠……翠……俺の翠」
苦し気に翠を呼ぶと、翠も応じてくれる。
「流……大丈夫だ。僕はずっとここにいる。もう何処にもいかない」
翠の唇を塞いで、抱きしめた。
「んっ……」
そのまま浴衣の帯をするりと解いて、手を滑り込ませた。
触れたい。
翠の身体の隅々に。
今まで許されなかった場所にも、触れたい。
唇を重ねたまま、手は翠の首筋から鎖骨、肩のラインを滑り降り、手を絡め合う。片方の手をシーツに縫い留め、白い平らな胸を撫でた。小さな突起を指先でキュッと摘むと、翠が顔を歪ませ腰を跳ねさせた。
「あうっ!」
「痛かったか、悪い」
「んっ……ん……あっ……」
そんな色っぽい声を出すな。
おかしくなる。
興奮したまま翠を呼ぶ。
何度も呼んだ。
「翠、翠……俺の翠、ずっとこうやって触れたかった」
翠が結婚して家を出て行く日、俺の目からは血のように熱い涙が一筋流れた。それほどまでに悔しく悲しかったんだ。
「んあっ……っ」
胸に思いっきり吸い付き、続いて乳輪を舌で撫でると、翠がピクピクと震えた。
「流……もしかして、さっきも……今のように……触れたのか」
「悪かった。寝ている翠にフライングしてしまった」
「……やはり」
「怒っているか」
「いや、でも、まだ慣れない。こんな風に一方的にされるのは」
「翠はそのままでいい。今日は俺に委ねてくれ」
「でも……それでは」
「俺の愛撫に素直に応じて欲しい」
「そんな姿を見せるのは……恥ずかしいよ」
翠が手の甲で、赤く染まる目元を隠してしまった。羞恥に悶えているようだ。
「男は……俺が初めてか」
「……当たり前だ」
「良かった。翠の初めてを、もらいたかった」
「おい、僕をいくつだと思って?」
翠が大きく息を吐き、俺の背中に手を回して甘えるように囁いた。
「流……僕、上手く出来るか分からないよ。でも流になら何をされても大丈夫そうだ……だから……委ねるよ」
はっ、鼻血が出そうな台詞だ。
「翠……あんまり可愛いこと言うなよ。止まらなくなる。でも痛い思いはさせたくない。だから身体の力を抜いていてくれ」
翠は完全に俺に抱かれる覚悟が出来たようで、素直に頷いてくれた。
吐息を重ねて、抱き合った。
「流……僕を……最後まで……抱いてくれ」
感極まる。
この世で、俺の人生で、翠がこんなに甘美な台詞を放ってくれるなんて。
まだ夢を見ているようだ。
「ふぅ……いざとなると勇気がいるな。胸元の月輪が、翠の身体に反射しているように見える」
「え……そうなのか」
翠の胸元で、丈たちから受け継いだ月が乳白色に静かに瞬き、俺たちの興奮を吸って熱くなっていた。
「月輪も待っているようだな。俺たちが繋がる時を」
「……うん、そのようだ」
翠が身体の力を抜いて、俺に全てをさらけ曝け出してくれる。
俺を受け入れてくれるのだ。
この細い身体に、俺の長年の想いを受け止めてくれる。
思わずブルッと武者震いすると、翠がふっと優しく微笑んでくれた。
「ひとつになりたい」
「あぁ、ひとつになろう」
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