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色は匂へど 23
前置き
大変お待たせしました。二人の初逢瀬は『重なる月』でも書きましたが、逆の視点でこちらでは書いていきます。忍ぶれどのために、書き下ろしていますので、新鮮に読んでいただけるかと思います。もう完結目前です!
****
僕が漏らした言葉に、流が困惑したようだ。
「おいっ反則だ。どうするんだよ。 もうこんなにガチガチなのに!」
溜息交じりの文句を言われて流の股間にもう一度目をやると、また一回り大きくガチガチに興奮で脈打っていた。
流が苦悶の表情を浮かべている。
緩和してやりたい。
我が身を差し出して、我が身で受け止めて――
僕はもう全裸になっていた。
成人した弟の前で一糸纏わぬ姿で無防備に横たわるのは猛烈に恥ずかしかったが、少しも怖くはなかった。
もう覚悟は出来ているから。
男性同士の性交経験はないが、流れに任せよう。
流に任せよう。
「いててっ……」
「大丈夫なのか。流……あの……僕はどうしたらいい?」
知識が乏しくて、頼りない兄ですまない。
いやこれでいいのか。
分からぬことは、これからは流に教えてもらえばいい。
道は一人で切り開かなくてもいい。
この先は流と歩むのだから。
さぁ、僕は何をすればいい?
目で訴え問いかけてみると……
「翠の手で触ってくれないか」
「えっ」
「なぁ、駄目か」
「うっ……」
なるほど、そう来るんだね。
僕は曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。流が僕の頼みを断れないのと同様、僕も流の頼みを断れないのを知っていたようだね。
「よし、分かった」
指を伸ばし流の熱い昂ぶりにそっと触れると、流が気持ちよさそうに精悍な顔を緩ませてブルッと武者震いをした。
「わっ、また大きくなったよ」
「くぅ……もう辛い。一度出したいから手伝ってくれ」
「……えっ、あ、うん……分かった。こ…こうかな?」
普段滅多に自慰をしないので、ぎこちなく流の昂ぶりを扱き出した。
我ながら拙い動きだと苦笑すると、流が僕の耳元にちゅっと口づけをした。
「可愛いよ。もっとガシッと握ってくれよ」
流の手によって、そこをしっかり握らされた。
「あっ……流の熱い」
「だからそれ反則だ」
苦悶の表情すらも色っぽく、流の表情に僕の鼓動はどんどん早くなっていく。
「流は見惚れてしまう程……男らしくかっこいいよ」
僕の甘い言葉に導かれたのか、流が身体を前屈みにして「くっ」と短い声を漏らした。すると、すぐに僕の手をすり抜けて、腹に生暖かい白い飛沫がかかった。
「はぁはぁ、翠が悪いんだぞ。反則ばかり」
「ご、ごめん」
小さく謝ると流の逞しい腕に抱きしめられた。
流の心の声が聞こえてくる。
……
翠の身体の中で受け止めて欲しい。
俺の欲望を全て受け止めてくれよ。
翠を抱きたいんだ!
……
****
(いいよ、このまま流の好きなようにしておくれ)
心の中で抱きたいと訴えると、何故か翠の許しを得た気がした。
その証拠に翠は俺に身を委ねたまま、静かに頷いてくれた。
「少し待っていてくれ」
俺は急いで寝室を飛び出し、パウダールームから小さな瓶を持って戻った。
翠は火照った身体のままベッドに身を投げ出していた。
今度は声に出して問う。
「この先に進んでいいか」
「この先とは……」
迷い無く翠の尻たぶに手を這わし、蕾を指で擦った。
「あっ……」
「翠とここで繋がりたい。ここに俺を挿れたい。なぁ駄目か」
翠は明らかに動揺していた。
男同士が交わるにはどういう方法を取るのか知ってはいただろうが、いざ自分の尻を触られて問われるのとでは訳が違うよな。
「うっ」
瓶の中身はボディオイルだ。
ずっと兄を見上げて育った俺に、こんな日がやってくるなんて。
きっと今、翠も同じように昔を思い出しているのだろう。
翠は2歳しか離れていないのに、俺のおむつを替えるのを手伝ったり、ミルクも飲ませてくれたと母から教えてもらった。成長しても兄はいつまでも華奢で綺麗で、俺だけがどんどん背も体格も成長して、何もかも追い越してしまった。
そして今、その兄は弟の俺に押し倒されている。
「翠……覚悟は?」
「僕は流を求める一人の男だ」
「俺は翠を求める一人の男だ。翠、迷いはないか」
「ない!」
過去の切なる願いに突き動かされるように、俺たちはこれから身体を繋げて一つになる。
その覚悟はお互いに出来ている。
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