枯れゆけば 8

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枯れゆけば 8

 前置き  しばらくしんどい展開が続きます。  達哉も翠もまだ16〜17歳。大人びた事を言ってもまだまだ未熟です。この頃の流もまだまだ子供です。  物語の空気が重たいので、本日5スター特典更新しました。こちらは楽しいコメディタッチです。https://estar.jp/extra_novels/26120608 ****  白い小袖に緋袴で、伝統的な巫女装束に身を包んだ翠は、はっとするほど美しかった。  その頬は恥ずかしさからだろうか、徐々に色づく紅葉のように染まっていた。 「あら、よく似合うわ~ このままでも十分可愛いけれども、せっかくだからロングヘアのカツラをつけない?」 「……もういっそ……僕だと分からないようにしてください」 「ははっ、翠いいのか? 今のセリフ、姉さんに弄られるぞ」 「こうなったら、とことんやるよ。それに女装と言えばワンピースや制服を覚悟していたから、これは想定外だった。これならなんとか頑張れそうだ」  面白いことを言う奴だと思った。  いつも控えめで柔和な翠にも、潔い一面があるようだ。  一度覚悟を決めたらとことん身を尽くす、投じる性格が見え隠れする。 「翠くん可愛いこと言ってくれるわ。じゃあこっちに来て、メイクを一からしましょう。といってもお肌はすべすべで色白だからファンデーションはあんまり塗らない方がいいわね」 ****  達哉のお姉さんに誘われ、鏡台の前に座らされた。  髪は長髪の黒髪に。いつもの栗毛色の髪と違って漆黒の烏のようだ。ファンデーションとやらを厚塗りされることはなかったけれども、粉をはたかれ思わずむせそうになった。更に唇にリップを塗られ、それから朱色の紅をさされた。 「あっ……」  途端に自分が誰だか分からなくなった。まるで黄昏時に出逢う現実ではない気分だ。 「どう? 完璧でしょ! これならどうみても女性よ」 「うーん。でもさぁ……姉さん胸がぺったんこだぜ」 「あら本当だ。ブラしないと」 「ぶっブラ!? それは無理っ」 「翠よく聞け。なりきるんだろ」 「いや、それとこれとは別だ」 「んー ブラは抵抗があるの?」  お姉さんに聞かれてコクコクと頷くしかなかった。流石に女性のブラジャーを身に着けるなんて無理だ。だが抵抗を続けると妥協案を出されてしまい断れなくなった。 「じゃあ、このカップ入りタンクトップなら良いわよね。これなら抵抗が少ないと思うわ」 「えー 俺は翠のブラ姿みたいぜ」 「んっ、もうっうるさい子ね。翠くんの気持ちに寄り添いなさい」  結局お姉さんにの意気込みに押され、胸にカップの入ったタンクトップを借りることになってしまった。  スカスカのカップの中に柔らかい布まで詰められ、なんとも居心地が悪く居たたまれない。  淡い、少女のような胸の膨らみが恥ずかしい。 「おおおっ、翠いいぜ! 最高にいい!」 「はぁ……何がいいんだか。達哉は僕のことを見て楽しんでいるだろう?」 「んなことないって! なぁせっかくだからその格好で寺の中を歩いてみろよ」 「なんで?」 「仕草とかも女性らしく見せないとカッコ悪いぜ。拘るときはとことんなんだろ? 翠ならば出来る!」 「うーん、そうかな」
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