1人が本棚に入れています
本棚に追加
あの時は、まだ良かったんだ。まだ良かったはずなんだ。夢の中で誰かが訴えている。ね?わかるよね?あなたはいい子だから。「火奈立」。目が覚めれば片目が見えなかった。理由はわかっていた。いつものことだった。2年前からだったっけ。診察に行ったんだ。僕は『彼岸病』という奇病にかかっていた。昔っからだった。
体の一部から、夢の内容によってどんどん彼岸花になっていく。そして、最後には彼岸花になり、人として見てもらえなくなるんだ。医師からはそう伝えられた。本当は怖かった。でも、もう諦めたんだ。だからこそ、呑気に
「ま〜た彼岸病か〜。」そう咄嗟に呟いた。
寿命が決まってるんだ。後半年だっけ?最初は焦ってたさ。まぁ皆そうだろうけど。
でも、どうでも良くなったから。感情を捨てたし。もういいんだ。片目が見えないまま、リビングへと向かった。正直、片目ぐらいどうでも良かった。わかっていたから。
最初のコメントを投稿しよう!